受験生と食事は、切っても切り離せない関係にあります。そもそも、生きていくために食べることは必須ですし、脳細胞も栄養があってこそ働くからです。
もし栄養不足になれば、脳がうまく働かないため、集中力や記憶力、思考力、判断力といった機能が減退してしまうことに・・・。
またお腹が空腹であれば、受験勉強に集中するどころではなくなるでしょう。
このように食事や栄養面で問題があれば、いくら効果的な勉強方法を実践しようとしても、それができなくなります。そのほか睡眠不足であっても、体にダメージを受けて脳が働かなくなるので、試験勉強どころではなくなります。いくら勉強に忙しいからといって、食事と睡眠をおろそかにはできないということです。
勉強と食事のことを考えるとき、以下のことがポイントになります。
- 脳に欠かせないエネルギー源を摂る
- ゆっくりと血糖値を上げる
- ビタミンB1を摂る
- DHAやEPAを摂る
- そのほかの必須栄養素を摂る
これらは受験生の食事法というだけではなく、誰にとっても重要なことばかりです。
つまり一般的にいわれる「健康的な食生活」が、そのまま受験生に有効な食事法ということになるわけです。受験生といっても普通の人と変わらないので、当然といえば当然のことですね。
ただ、プラスアルファとして、頭がよくなる食べ物や栄養素、サプリメントといったものもご紹介していきます。
もちろん脳に効く栄養素を大量に摂っても、それだけで頭がよくなったり、成績や偏差値、模試の判定結果が上がるわけではありません。日ごろの勉強があってこその栄養素ということを忘れないようにしましょう。
なお一番最後に、栄養素以外で大切な注意点を書いていますので、参考にしてください。
脳に欠かせないエネルギー源を摂る
受験生の食事を考えるとき、絶対に欠かせない栄養素があります。
もうお分かりだと思いますが、それは「ブドウ糖」です。糖質や炭水化物とほぼ同じことですが、最終的に一番小さく分解された栄養素が、このブドウ糖です。
エネルギーになる栄養素には、このほかに脂質やタンパク質がありますが、脳が利用できるのはブドウ糖だけです。ですから、いくら脂肪分たっぷりの食事をとっても、それは脳のエネルギー源にはなりません。
低炭水化物ダイエットをしていたり、普段から甘いものを控えている人は、脳のエネルギー源が少なくなる危険性があるので注意しましょう。脳のエネルギー源が不足すれば、当然、脳は上手に働かなくなります。
集中力が減退して気が散ったり、うつ状態になったり、イライラしてきたりします。
普段の学習においては、勉強の質がうんと下がりますし、模試や中間・期末テスト、本番の試験においては、集中力の欠如によるケアレスミスが多発する原因になります。受験生の食事法では、ブドウ糖の重要性は、いくら強調してもしすぎることはないのです。
ゆっくりと血糖値を上げる
なおブドウ糖の摂取の仕方には、単糖類や小糖類といった「甘いもので摂取する方法」と、白米や麺類、パンなどの”でんぷん”を利用した「炭水化物で摂取する方法」とがあります。
お菓子や果物などの甘いものは、すぐに脳のエネルギー源になるというメリットがあります。
ただし一度に食べすぎると、一気に血糖値が跳ね上がります。そうするとインスリンが大量に分泌されるので、そのあと急激に血糖値が下がってしまいます。つまりブドウ糖を補給しても、逆に低血糖になってしまうのです。それでは脳へのエネルギーがすぐに尽きてしまいます。
これを防ぐ方法としては、甘いものを一度にたくさん食べずに、たとえばチョコレートを少しだけ食べて補給する。
あるいは、カテキンが含まれる緑茶や、野菜などの食物繊維(青汁が効果的)と一緒に食べることです。
カテキンや食物繊維は腸内で、ブドウ糖をからめ取って、一気に血糖値が上がらないようにしてくれます。
緑茶と甘いものの組み合わせは、虫歯も予防してくれますし、ストレスを緩和するビタミンCも摂取できるので、受験生の食事法としてオススメです。
とはいっても受験生の食事として、一番のオススメは、炭水化物によって徐々に血糖値を上げていく方法。
炭水化物は口腔内での唾液による分解から始まって、小腸内で徐々にブドウ糖にまで分解されていきます。ブドウ糖になるまでに時間がかかるので、一気に血糖値が上がらず、「腹もちがよい」メリットがあります。
一度食事を摂れば、数時間は何も食べなくても大丈夫なわけです。これは試験中にも重宝します。ですから試験当日の朝食や、昼食の弁当は、甘いカロリーメイトよりも、白米を中心とした炭水化物がよいのです。
なお頭を働かせるためには、かならず朝食を摂るようにしましょう。
睡眠中はずっと食べていないので、起床したときには脳へのエネルギー源が残り少なくなっているか、すでに枯渇しています。ですから朝起きたら、すみやかに炭水化物を中心とした朝食を摂るようにします。そうしないと、学校や会社にいっても、脳が働かず、作業効率が減退してしまうことに・・・。
受験生は、まずは朝にしっかりと炭水化物を食べることが、勉強方法の出発点なのです。
ビタミンB1を摂る
さて、このように脳が働くために絶対に欠かせないブドウ糖ですが、これだけではエネルギー源にはなりません。ビタミンB1が同時に必要になります。ビタミンB1は、「糖質や脂質を代謝するときに活躍する酵素」を支援する”補酵素”となります。縁の下の力持ちの、その下でさらに支えている貴重な存在ということですね。
ビタミンB1が不足すると、いくらブドウ糖を摂取しても、それをエネルギー源として使えなくなります。
そうなると疲れやすかったり、倦怠感を感じたり、勉強のやる気がでなくなったりしてしまうことに。疲労物質が全身にたまって、勉強への活力がわいてこない危険があります。
ビタミンB1は豚肉に多いことで有名ですが、もっと簡単に摂取する食材としてゴマ、アーモンド、カシューナッツ、牛乳、大豆、大豆製品(納豆など)があります。ほかにもたくさんありますが、ここに挙げたものは日常のなかで気軽に摂れるのではないでしょうか。
糖質の吸収には、そのほかにビタミンB2やコエンザイムQ10(CoQ10)も関係しているので、食事で摂れなければ、サプリメントを上手に活用していきましょう。またビタミンB群は、すべてが助け合って働いているので、サプリメントで摂る場合はB群すべてを摂ると効果的です。マルチビタミン・ミネラルがオススメです。
DHAやEPAを摂る
ブドウ糖とビタミンB1は、脳が働くために「最低限必要な栄養素」です。
この土台のうえに、さらに脳を活性化させる栄養素がいくつかあります。
- DHAやEPA
- カルシウムとマグネシウム
- レシチン
- タンパク質
- 鉄分
DHA(ドコサヘキサエン酸)とEPA(エイコサペンタエン酸=IPA)は、青背の魚に多く含まれています。
人間の体内では作ることのできない不飽和脂肪酸の一種で、そのうちのn-3系(オメガ3)に当たります。
いろいろな実験で、DHAとEPAには脳の血流をよくし、頭の回転を高める効果があることが知られています。
ですから受験生の食事としては、毎晩、魚を食べるとよいかもしれませんね。
一人暮らしで料理をしないという人は、さんまの缶詰をコンビニで買ってきたり、刺身のパックをスーパーで買ってきてもよいでしょう。たまには回転寿司なんかに行くと、気晴らしになり、栄養も摂れるのでオススメです。独学で資格試験を目指しているかたや浪人生は参考にしてください。
なおDHAとEPAは、αリノレン酸がもとになって体内で合成されます。そのためαリノレン酸を含む食材を摂っても、同様の効果があります。たとえば、クルミにαリノレン酸は含まれています。
そのほかの必須栄養素を摂る
カルシウムとマグネシウムのコンビネーションも、受験生の食事には欠かせません。
カルシウムが不足すると、脳内の神経伝達がうまくいかなくなります。反対にカルシウムを積極的に摂ることによって、イライラが静まって勉強に集中できるようになります。マグネシウムにも同様の効果があります。
カルシウムとマグネシウムは、2:1の関係で摂取したとき、最大限にカルシウムが吸収されるといわれています。カルシウムの場合、牛乳で摂ると吸収率が高くなります。またカルシウムやマグネシウムは、先ほど挙げたゴマやアーモンド、大豆製品に多く含まれています。毎晩、納豆を食するのもいいですね。
動物実験では、マグネシウムを摂ることにより記憶力の増強が見られたといいます。
なおインスタントラーメンやファーストフードに含まれるリンを摂りすぎると、カルシウムの吸収を阻害してしまうので注意が必要です。
そのほかレシチンも頭をよくする栄養素としてオススメ。
レシチンはリン脂質のことで、脳の神経細胞の構成要素として欠かせません。レシチンは納豆や豆腐といった大豆製品に多く含まれています。レシチンをサプリメントで摂ることもできますが、自然の食材からとったほうが健康的です。レシチンも多く摂ることによって、記憶力が高まることが知られています。記憶に関係のあるアセチルコリンという神経伝達物質の合成を促す働きがあるからです。
受験生にオススメの栄養素としては、そのほかにタンパク質や鉄分などもあります。
脳細胞(ニューロン)それ自体や、セロトニンやドーパミンといった神経伝達物質はタンパク質でできているので、不足すると脳の機能が衰えてしまいます。
肉類から摂取するのでもいいですが、先ほど挙げた青背の魚から摂ると、アミノ酸価が高いのでオススメ。
また納豆と白米の組み合わせは、お互いに不足しているアミノ酸を補足しあうため、栄養価の高いタンパク質となります。
鉄分は赤血球にあるヘモグロビンの原料になります。鉄分が不足すると、酸素を運搬するヘモグロビンが減少。すると脳に、あまり酸素を運べなくなるので、脳の働きが鈍ることに・・・。これも先ほど挙げた、ゴマやアーモンド、カシューナッツなどに多く含まれています。なお、緑茶やコーヒーに含まれる「タンニン」を摂ると、腸内での鉄分の吸収を阻害してしまうので、摂取するさいは緑茶やコーヒーを飲む時間と離すようにしましょう。
このようにして見てくると、受験生の食事といっても、糖質、脂質、タンパク質、ビタミン、ミネラル、食物繊維といったように、バランスのよい食事を摂っていれば、しぜんと賄えるということになりますね。
最後に
なお夜食を摂る習慣があると、「食餌同期性リズム」によって、血糖値を上げなければ寝れなくなります。
夜食が習慣になってしまうのです。そうなると生活リズムが崩れて、試験日になっても、午前中から頭が働かないなんてことにもなりかねません。
これを防ぐためには、まずは朝起きたら朝食をしっかり摂りましょう。
そうすれば朝型の生活リズムが定着します。1日の初めに、しっかりと食事を摂ることによって体温が上がり始めるので、夜に速やかに寝付けるようになります。規則正しい生活リズムをつくるためには、朝の食事が重要なポイントになるのです。
また食べ過ぎると、その後しばらくは頭が働かなくなります。
胃腸のほうに血流が集中するので、当然といえば当然といえるでしょう。ですから食事は、つねに「腹八分目」を心がけることが大事です。そうすれば食事をしたあとに、すぐにでも勉強に取り掛かることができます。
逆に断食とか、1日2食の生活スタイルにすると、ブドウ糖が決定的に不足するので、脳の働きが鈍ってしまいます。たまに、食べないほうが、頭が冴えるという人がいます。これはランナーズハイといっしょで、体が危機的な状況になっているために、脳内からモルヒネ様のβエンドルフィンという物質が分泌されるからです。
しかし、ブドウ糖を不足させた「つけ」は、あとから反動として返ってきます。そうならないために、「極端」は避け、1日3食の食事を規則正しく摂っていきましょう。
なお、すべての食材にたいして言えることですが、時間をかけてよく噛むことによって、消化・吸収が活発になり、より確実に栄養素を取り込めます。それだけではなく、咀嚼を心がけることによって、脳の働きが活発になります。記憶を司る海馬の働きが向上することが知られているのです。
咀嚼という「リズミカルな運動」によって、気持ちを落ち着かせるセロトニンという神経伝達物質も分泌されるので、受験生の食事では、よく噛むことを心がけることが基本になります。